青野君の犬になりたい
「青野君の犬になりたい」
姫子さんになりたいと思ったら、つい口走っていた。
「あ……」
はっとして、頬が熱くなった。
頬に触れていた指が下に滑り落ち、私の顎を持ちあげる。
青野君は私の顔を覗き込み、フッと笑った。
「やっぱり葉山さんて変態。いいよ、彼女じゃなくて俺の犬にしてあげる。愛犬2号のななちゃん」
「え、犬? 私、彼女でもいたい……」
「欲張りだなあ。それじゃ葉山さんは俺の愛犬『なな』で、4番目の彼女『七海さん』ということで」
彼女4号で愛犬でも2号。これで何が欲張りなのだ。
というか、私がなりたいのは彼女4号でも愛犬2号でもない。
どうしてこんな展開になるのか。
私はグラスに沈む生ぬるくて気の抜けたビールを一気に飲みほした。

< 49 / 125 >

この作品をシェア

pagetop