青野君の犬になりたい

バースデー

その後も、会社での私と青野君はこれまでと何ら変わりない。
いや、そんなこともないか。社内では「葉山さん」と呼ばれ、これまでの距離感を保っているが、たまにすれ違いざま「七海さん、なんか今日、きれい」とか耳元にこっそり残していく。
ドキッとして振り向いても、青野君の後姿があるだけだ。

PCのスクリーンから青野君の席に目をやる。
いないと思ったら後ろで「葉山さん」という声がしてびっくりする。
「そんなに驚く?」
青野君が分厚いファイル抱えて立っていた。
淡いブルーのシャツとネイビーの細身のパンツ姿がよく似合っている。
草みたいな青野君ぽい。
< 76 / 125 >

この作品をシェア

pagetop