冷徹ドクター 秘密の独占愛


患者さんの顔にタオルを掛けていると、ユニット備え付けのPCモニターに転送されたパントモ画像を見に副院長がやってくる。

気にせずライトを引っ張り口腔内に向けて調整していると、いきなりツンツンと肩を突かれた。

急なことに、思わずビクッと肩を揺らしてしまう。

振り向くと、モニターに映し出されたパントモ画像を指で示した。

無言で映し出された縁下(えんか)歯石を指摘する。


「ポケット深かったらSRP(エスアールピー)していく」

「わかりました」


返事が若干上擦っていた。

過剰反応かもしれないけど、肩を突かれて呼ばれたことは今まで一度もない。

たったそれだけのことなのに意識しすぎの自分に恥ずかしくなる。

気を取り直して「開いてください」と声を掛けて見た口腔内は、稀に見る歯石の着き具合だった。


< 109 / 278 >

この作品をシェア

pagetop