冷徹ドクター 秘密の独占愛


おいおいおい……マジですか。


今聞いた情報だけで、私の中でまだ見ぬ副院長という人物像がむくむくと出来上がっていく。

とんだ鬼畜歯科医。

昨日までいた衛生士さんだけではなく、もう何人も彼が原因でスタッフが辞めているなんてこれは本物だ。


「気の弱そうな子とか、打たれ弱い子は長続きしないんです。怒られても気にしないとか、鈍感力があるとか、今いるスタッフはそういう人が生き残ってる感じで」


中田さんはそう言ってヘラっと笑ってみせる。

大分笑えない話をされた私は、若干顔を引きつらせながら無理に笑顔を作っていた。


「でも、腕は確かみたいですよ。他の先生たちが言ってたから」

「そうなんだ…….じゃあやっぱり、バリバリ系って感じなんですかね」

「バリバリ系?」


中田さんは私の発言が可笑しかったらしく、クスクスと笑いだす。


「浅木さん、もしかして結構面白い人だったりします? バリバリ系って」

「えっ、だって、そうなのかなーって……」

「うん、でもその表現でぴったりかもしれない。律己先生は、バリバリ系ってやつですね」


人が辞めてしまうほどの難ありな性格の上、診療は“バリバリ系”。

話を聞いて、私こそ続けていけるのだろうかと思わずにはいられなかった。

初日にしてお先真っ暗。

そんな気分になった。


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