冷徹ドクター 秘密の独占愛


今度はパッと表情を輝かせて、とんでもないことを言って盛り上がる華世。


有り得ない。
絶対、有り得ない。


たぶん今、私の顔は華世を軽蔑するような酷い表情になっているのだと思う。

華世が「千紗、顔恐い!」と抗議した。


「いや、だって冗談きついから」

「冗談じゃないよ〜? だって考えてみなよ、実習生の忘れ物なんていつまでも持ってる? もう何年も前のだよ? もしかしてさ、千紗とまた再会したいと思ってたのかもじゃん」


華世の広がる妄想に、もう呆れて物が言えなかった。

どうしたらそんなおめでたい発想ができるのか、不思議でしょうがない。

基本マイナス思考寄りの私からしたら、昔からプラス思考で、何でもいい風に考えられちゃう華世の性格は羨ましかった。

だけど、ちょっとこれは行き過ぎている。


「もうっ、やめやめ! この話終わりにしよ」

「えー、何でー? せっかく盛り上がってきたのに」

「勝手に盛り上がんないでよ。それに、そういうこと絶対ないから。賭けてもいいよ」

「ほー、言ったな? じゃあ、副院長と何かあったら、ホテルディナーフルコースね」


ニヤリと意地悪く笑って華世は言う。

その自信があるような顔に、私も負けじと口角を上げて対抗した。


「温泉旅行くらい賭けてもいいよ。いや、沖縄旅行とか賭けても全然余裕」

「おっ、言ったな? わーい、沖縄行きたい〜」


旅行奢りを賭けても全く問題なし。

副院長があのボールペンを持っていたことに、深い意味なんて絶対ないはずだから。


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