溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~


 花梨としてもこの疑惑はありがたかったりする。入社して間もなくポンコツシステムを新條と一緒に担当することになった当初は、主に女子からの風当たりが強かった。おかげで社内に友達と言えるような女子がいない。

 だが、この噂が広まって以来、逆に憐れまれている気がする。どんなに親しくしていても、彼の恋愛対象にはならないからだ。
 新條を狙っていた女子からしてみれば、花梨は友達から彼女に昇格を狙ってアプローチしているように見えるのかもしれない。
 仕事の都合上一緒に残業したり行動することも多いし、その延長線上で一緒に食事や飲みに出かけることもある。いわゆる腐れ縁みたいなもの。

 いずれふられて落胆する姿を想像しながら静観しているのだろうと思うと、あからさまな嫌がらせを受けるよりはマシなので放置している。

 ゆうべも酔っぱらって一緒に寝てしまっただけだろう。なにかあったとは思えない。新條のものと思われるパジャマに着替えていることが若干気になるところではあるが。

 新條は額を押さえて大きくため息をつく。

「その噂信じてるんだ」
「え……」

 ドクリと心臓が脈打つのを感じた。まさか自分は根拠のない噂を信じていたただの間抜け?
 そんなはずない。噂が広がる前だけど、美女な先輩に告白されて女に興味ないって迷惑そうに言ってたし。でもゲイだとはっきり確認したこともないけど。
 ちょうどいいので、恐る恐る確認する。

「……違うの?」
「さぁ?」

 意味ありげに目を細めて、新條の整った面に妖艶な笑みが浮かぶ。次の瞬間、花梨はベッドに引き倒されていた。のしかかってきた新條に体ごと押さえつけられて身動きがとれなくなる。


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