溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~
驚いて尋ねる花梨に、新條はきまりがわるそうに言い訳をする。
「酔いつぶれた親父を兄貴が迎えに行くときついて行ってたからだよ。そのときに飲ませてもらった生搾りオレンジのトニックウォーター割りが気に入って度々ついて行ってたから」
「未成年がお酒飲んでたの!?」
「アルコールは入ってないよ。炭酸のオレンジジュースみたいなもの」
「なんだ。びっくりした」
花梨がほっと胸をなで下ろしたとき、目の前にグラスが置かれた。
「これはアルコールが入っていますが、味の雰囲気は似ていますよ。ミモザです」
細長いグラスに注がれたオレンジ色のカクテルはグラスの底から細かい泡が静かに立ち上っている。花梨はさっそくひとくち飲んでみた。
甘酸っぱい香りが鼻腔をくすぐり、オレンジの甘さに炭酸の爽やかさとアルコールがのどを刺激する。さっぱりして飲みやすいカクテルに思わず目を細めた。
「おいしい。これは確かにリピートしたくなるわ」
「だろ?」
新條が得意げに胸を反らす。いつも余裕の自信満々だけど自慢することはない彼にしてはめずらしい。子供のころはどうだったのか興味が湧いて花梨は水谷さんに尋ねた。
「中学生のタカヒロさんってどんな子だったんですか?」
「わー、もう。聞かなくていいって!」
焦って制する新條をおもしろそうに見つめながら、水谷さんは言う。
「物怖じしない堂々としたお子さんでしたよ」
どうやら昔から自信満々だったらしい。そして水谷さんは何かを思いだしたらしくクスクス笑った。
「お父様を迎えに来たとき、カウンターに片肘ついて、私に”マスター、いつもの”って言われてました。私はマスターではないんですが」
「あはっ、かわいい」
「あー、もう! 水谷さんもそれ以上言わなくていいから、オレおかわり!」
新條は照れ隠しのムッとした表情で空になったグラスを水谷さんに突き出す。水谷さんはニコニコしながらグラスを受け取って尋ねた。
「同じものでよろしいですか?」
「レインボー。無駄口叩いてる余裕なくしてやる」
「かしこまりました」