溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~



 これが虫除けにはかなり効果的だったようだ。
 大学時代に何度か友人に誘われて合コンに参加したことはあるらしい。その時「両親に紹介したい」と言うと、軽い気持ちで声をかけた男はことごとく退いていく。

 当然野口くんにも同じ事を言った。だが彼は退かなかったのだ。

「すごく嬉しかったです。私、北斗さんなら両親にも気に入ってもらえる自信がありましたから」
「のぐりん、優しいもんね」
「はい。私が元気ないことに気付いてくれたことが嬉しかったんです」

 嬉しそうに笑う田辺さんを見ながら、花梨は幸せになってほしいとまるで親のような気分になった。いずれこの事実を知れば、新條の田辺さんへの態度もかなり軟化するのではないだろうか。

 思わぬ衝撃の事実を目の当たりにして、自分のことはごまかすどころか自分自身の頭から吹っ飛んでしまった。なのに田辺さんは忘れてはいなかった。にっこりと余裕の笑みを浮かべる。

「そういうわけで、私が花梨さんと新條さんの仲を邪魔することはありませんので」
「あ、いや、私と新條は別に……」

 突然自分の問題に話が戻って、せっかく考えた言い訳もすっかり飛んでしまった花梨は、早々に敗北を認める。声を潜めて懇願した。

「お願い。誰にも言わないで。私もそういう意味でつき合い始めたのは最近なのよ」
「はい。会社の人に知られたら花梨さんは大変ですものね」

 田辺さんはにっこり笑って頷いた。


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