溺愛スイートライフ~御曹司に甘く迫られてます~


 花梨と新條の同期は数ヶ月に一度みんなで集まって飲み会を開いている。
 新人教育の後、それぞれ配属が決まって初めての飲み会の時、花梨は参加したが、新條は欠席した。教育期間中はそれなりに親しくしていた女子社員も何人かいたので、久しぶりに彼女たちに会えるのは楽しみだったのだ。

 ところが、新條が欠席したことで、彼女たちの狙いが新條であることがはっきりした。花梨と親しくしていたのも、なぜか花梨にだけ気安く接してくる新條に少しでも近づきたかったから。

 新條の飲み会欠席を知った彼女たちは、同じ部署なんだからそこは連れてくるのが花梨の義務だと攻めた。面倒くさくて男子同期の中に紛れ込もうとしても、なぜか男子たちにも敬遠されて話相手になってくれない。

 結局、飲み会の間中女子同期に取り囲まれて、新條に関する事情聴取を受けた花梨はそれ以来同期の飲み会には行っていない。そして同期女子とも疎遠になっていった。

「へぇ、そんなことがあったんだ」
「あんた一回も行ってないでしょ」
「いやぁ、面倒くさいことになるから来ない方がいいって言われてたし」
「その情報、私にも流してほしかったわよ。私、男子にも嫌われてるのかなぁ」
「え、なんで?」
「だって、飲み会の時誰も相手になってくれなかったんだもん。わざとらしいくらいによそよそしかった」

 花梨はふてくされたようにごはんを頬張る。それを見ながら新條は申し訳なさそうに苦笑した。

「ごめん。それたぶんオレのせい」
「どういうこと?」
「花梨はオレのだから、酔った勢いでちょっかい出したらただじゃおかないって言っといたから」
「はぁ!? 全然あんたのじゃなかったでしょ?」

 意図したわけじゃないとしても、結果的に花梨が社内で孤立してしまう一翼を担っていたのだ。怒る権利はある。
 益々むくれて花梨は新條をにらむ。新條は腰を浮かせて、なだめるように花梨の頭をなでた。

「ごめんごめん。不安だったんだよ。全く脈はないし、酔った花梨って結構ガードが緩いから」
「そんなことないわよ」


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