貴方が手をつないでくれるなら
【こんな夜更けにすみません。マナーモードにされてる事を願います。
ニュースを見てご存知でしょうが、最初の強盗殺人は被疑者が殺されてしまったという事で収めそうなのですが、またその被疑者が殺されたという事で、継続した別の事件に発展してしまいました。
こんな事ばかりを言い続けてしまうのも刑事としては情けないのですが。
まだ暫くいつ行けるとも解りません。何を置いても謝罪が先なのですが、仕事を理由にお会い出来ず、本当に申し訳ありません。
犯人はどんな人物なのかまだ解っていません。変わらず、戸締まりと、外出にはお気をつけください。柏木】
…はぁ。この文面なんか読んでると、ヤラせろなんて言った人と同一人物だなんて思えない程、本当きちんとしてると思うのよね。言葉遣いも凄く丁寧だし。
町田さんが代わりに送って来たのではないのよね?本当…人は見掛けによらないのはよく解った。こんなに気遣ってくれるのは刑事だからかな…こういう風な言い回しには慣れてるの?
あの髭は忙しくて無精髭だったのかしら…。あの時も徹夜明けだったとか言ってたし。無精髭とは違うのかな…整えているような感じだったし。
夜更けである事を気にしてのメールだから、朝になってから返した方が、余計な気を遣わせずに済むわね。…返信は朝にしよう。
コンコン。
「日向、起きてるか?」
あっ。
「うん、起きてるよ?」
「入るぞ、いいか?」
慌てて携帯を伏せた。
「うん、いいよ~」
ベッドに腰掛けた。
入って来て隣にお兄ちゃんも座った。
「眠れないのか?」
「え?」
頭に手を置かれた。
「…ん。声を掛けておいて何だけど、まだ起きてたから」
「あ、うん。もう寝ようとしてたんだよ?」
「…そうか。じゃあ、俺がそれを邪魔したって訳だ」
頭を撫でられた。
「そうだよ?」
「ハハ、悪かったな。あ、そうだ、明日な、遥が来てもいいかって」
…遥さん。
「そんなの、一々私に聞かなくていいよ。いつ来たっていいのに」
知らせてくる意図は、多分だけど、私に何処かに出掛けていて欲しいってことなんだと思ってる。遥さんは従兄弟。お兄ちゃんの方の従兄弟だ。はっきり聞いた訳ではないけど、多分、ううん、絶対遥さんはお兄ちゃんの事が好きだ。だって見てたら分かる。だから昔から時々うちに来る。
「そう言うとは思ったけど、聞いておいてくれって言うから一応な」
「私に遠慮してるのかな…。遠慮っていうか、敬遠されてるのは解ってるけど」
遥は俺が日向の事を妹以上に可愛がっていると思っている。そんな遥が、俺の事を好きな事も何となく解ってはいるつもりだ。
「お兄ちゃん?」
「あ、…ん?」
「遥さんと結婚しちゃえば?遥さん、お兄ちゃんから何か言ってくれるの待ってるんじゃない?」
「…日、向」