貴方が手をつないでくれるなら

目が覚めた時には、お兄ちゃんは居なかった。きっと起こさないようにそっと抜け出したんだ。
はぁ、…何だかよく眠れた気分。やっぱりお兄ちゃんだよ。

柏木さんにメールをしよう。もう構わないわよね。でも…まだ寝ているかしら。今何してるかなんて全く様子が解らないから。

ブー、ブー、…。ブー、ブー、…。ん゙ん゙…。携帯に手を伸ばした。

【おはようございます。昨夜はメールを有難うございました。事件の事は知っています。一般人はまず危険な人と対峙する事はありませんが、刑事さんはそれが仕事ですよね。
日頃から訓練等されていると思いますが、怪我の無いよう祈ってます。町田さんにも気をつけてくださいとお伝えください】

「…おい、町田。…町、田。おい!」

ペチ。おでこを叩いた。

「アタッ、あ゛ー、…何だよ…」

「何だよ、お前」

「はぁあ?呼んだのはお前だろ?ハ、フ…あー眠い…」

「だから、何なんだよ、お前…」

「はぁあ?…だから何だよ…」

「なんでお前が、毎回俺宛てのメールに登場するんだよ…」

「メール?は、何を…、訳の解らない事言ってるんだ、も゙う。知るかそんな事…」

おでこをさすっていた。

「眞壁さんから今メールが来たんだ」

「あぁ、眞壁さんね。……ほう、順調だなメル友。エッチの無い清いメル友」

ペチ。

「アダッ。何だよ…事実だろ?…もう起きてるだろうが。赤くなるだろ…」

「煩い…、寝ぼけた事言ってるからだ。これ…これだ」

「…何」

「またお前の事も書いてある」

画面を見せた。

「は?これは単なる気遣いの一つだろ?俺がいつもお前と組んでるから。だからだろ?逆に、お前ばっかりを気遣っての言葉ばかりだと…お前は完全に勘違いするだろ?…なんだ、この程度の事で、…彼女でもないのに妬いてるのか?だいたい…、言っとくけどな、向こうは俺らになんっの感情も持って無いからな?あるとするなら、お前に会うという、責任を果たさなければいけない義務の気持ちだ。初めからそれだけだろうが」

フン。…全く。お前の感情なんて知るかよ…。

「何なら眞壁さんに聞いてみろや。俺にアドレスを教えてもいいのかって。それも一つの指針になるさ。別に俺が知りたがってるって言ってもいいし。好きにしろ」

【町田にも伝えました。町田が貴女のアドレスを知りたがっていますが、どうですか?】

「送ったぞ?」

「は。馬鹿か、本当にしたのか?」

「ああ、馬鹿だからな?」

…そんな事言ったら、教えていいと言うに決まってるだろうが。
ブー、…。

「来た」

【構いませんよ】

…いいのか。

「何て?」

「構いませんよ、だってさ」

「な?何となくでも、何も無いってはっきりしただろ?」

「はぁ、…まだ続きがある」

「ん?」

「【電話番号もいいですよ】って、ある…」

…何で直ぐに…教える。知り合い、だからか。町田に信用があるのか。

「柏木…」

「馬鹿だけど、これで何となく解った事がある。眞壁さんは、俺よりお前の方に好意的だって事だ」

「それは、どうなんだか」

…って答えながら、鼻を明かしたとでも思ってんじゃないのか?まさか…それを解らせたくて、わざとアドレスの事、俺に聞かせたのか?こいつ。

「町田…お前、陰でこそこそしてんじゃないだろうな?」

「…はぁ、なんで俺がそんな事を…。第一、俺はいつもお前と居るだろうが。冷静になれ、そんな時間は無い」

「…フン。とっくにアドレスだって電話番号だって、本当は知ってたんじゃないのか?お前は眞壁さんに会ってるからな」
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