貴方が手をつないでくれるなら
ふぅ。携帯の電源て、病院だから切ってあるのかも知れない。もう、携帯は柏木さんの元に返すって言ってた。
【お身体の具合はどうですか?】
返事が無いかも知れないと思うと、質問形になってばかりでは意味が無いのかも知れない。
【犯人が逮捕されたという事は、私もまた並木道のベンチに行けるという事です。金曜を基準に別の日も行く事にします。傷がよくなって回復されたら仕事に復帰されますよね?】
あ、また質問形になってしまってる。
【会う約束で、いつも待っている事にします】
これでいいかな。もしかしたら町田さんが様子を知らせてくれるかも知れない。
…私のアドレス、まだ聞いてみてくれて無いのかも知れないけど…。
携帯が暫く震えていた。ここは携帯が使える病室だ。重傷とはいえ、手が動かせない訳ではない。
携帯を見た。あー、やはり眞壁さんだった。
俺から連絡をして置かないと心配させてしまうか…。
【驚かせてしまい、ご心配もおかけしました。俺は至って元気です。メールは病院に居る間はこれで最後にします。病院を出たら、またご連絡します。柏木】
あ、メール…来た。柏木って入っているから柏木さんからでいいのよね。
【解りました。お大事になさってください】
はぁ、これで暫くは連絡が無いって事か。そうよね。
コンコン。
「日向?起きてるか?入るぞ?」
「はい」
お兄ちゃん…?
「日向、今夜も一緒に寝よう」
「えー。お兄ちゃん、すっかり昔に逆戻りしてるんじゃないの?あー、なんか、やっぱりショックなんだぁ」
え?
「遥さんが来なくなる事。やっぱりどこかショックなんでしょ~」
あ、…ああ、そういう意味でショックって聞いたのか。俺がビビってどうする。
「違うよ、そんな事は無い。まっ、たく無い」
「どうだか?いいよ、一緒に寝ても。あ、お兄ちゃんのベッドは?これより大きいでしょ?今夜はお兄ちゃんの部屋にしようよ」
「俺の部屋か?」
「なんか、まずい?」
「馬鹿、まずくは無い。だけど、男臭くないか?」
「そんな事無いでしょ?男臭い?お兄ちゃんはまだ加齢臭だって無いでしょ?」
「か、加齢臭てな…」
その言葉、地味に傷つく…。
「じゃ、行こう?」
兄の背中を押しながら部屋の明かりを消した。
「ああ、うん」
「私が元気づけてあげるよ」
「フ、そんなんじゃないって。勘違いするな」
どちらかと言えば、日向の方が気になったからなんだが。
ドアを開けると同時に息を吸って見せた。
「スーッ。うん、ほら、別に男臭くなんか無いよ?」
「…日向ぁ、明白に言うな。何だか妙に恥ずかしいだろ」
「フフ。そう?気にしない気にしない。寝よう?」
「ああ」
先にお兄ちゃんが入り更に布団を捲ってくれた。腰を下ろすと同時に布団が掛けられスルスルっと滑り込んだ。
「う~ん。お兄ちゃんの匂いがする…。ベッドの中も、こうしてるのと同じ匂い…」
日向を緩く囲い込むようにして抱いた。
…いつまでこうして…何もしないで居られるだろうか。…日向。
「…そうか。…寝よう」
「あっ、加齢臭じゃないよ?フフ」
「ハ、ハ……まだ言うか…」