貴方が手をつないでくれるなら
「今日、殺人犯が捕まったでしょ?」
「ああ。それが?」
「その時の刑事さんが刺されて…。その刑事さんがちょっと知り合いなの…この前の件の人なの」
日向…、刑事と知り合いって、一体どういういきさつだ。
「んー、つまりその刑事さんが、最初の日向の慌てて帰った事に関係してるって事だよな」
「うん、そう、そうなの」
「で?その慌てた理由ってなんだ」
日向の様子がおかしくなった核の部分だ。
「それは…、刑事さんだからって、私の事、…昔あった事なんて当然知らないじゃない?だから、悪気があって言った事じゃないとは思うの。でも…男の性?って言うの?そんな内容の事をいきなり言われたから、…失礼な人だと思ったの…」
「…何て、言われたんだ」
…。
「…日向?言いにくいか?その…言葉っていうか…」
「…うん。…はぁ、…あのね、徹夜続きで可笑しくなってたんだって、それに、冗談だとは思うの。だから」
「何て言ったんだ?そいつは」
…。
「…日向?」
「…ヤラせてくれないか…って」
「は…何だって?本当なのか?…そいつは本当にそんな事…刑事のくせに信じられない。初対面の日向にそんな事を言ったのか?なんだそいつ、本当に刑事なのか?」
抱いたまま勢いよく身体を起こして座った。…怒ってる。
「あ、待って、ちょっと待って。落ち着いて。確かに言ったけど、でも、あのね、それから後で、凄く謝ってくれたの。だから、咄嗟に手を握られて、びっくりした事も、大丈夫になったから。本当にもう何でもない、その事は大丈夫になった事なの」
…ヤラせろだと?…それのどこが大丈夫なんだ…。手を握られただと?…そんな事を言う奴、本当に刑事なのか。なんて事を日向に言ってくれてるんだ。謝ったからって、知らなかったって言ったて。日向は辛い目に遭ってるんだ。傷つけられたって、訴えてやろうか…。
「日向…そいつ……。刺されたのがその刑事で…その刑事さんが刺されたって解って、動揺したって訳だな」
怒りは極力抑えて話した。
「うん。だって、知らない人じゃないし、知り合ったばっかりの人でも心配になるじゃない普通」
怪我した本人が暢気に連絡は出来ないだろう。確か、あのニュースは、刺された巡査部長は重傷だって言っていた。日向は仕事に戻ったから見て無かった。
仲間の刑事が直ぐ知らせて来たって事か…。
「本人からじゃなかったよな?誰かが連絡して来たのか」
「あ、それはね、一緒に行動をしている刑事さんが…」
やっぱりな。そいつとも親しいって事か。
「…日向、連絡先、教えてたのか…」
「うん、謝りたいからって。教えてもらった番号に私から連絡したの。その、連絡をくれた刑事さんは、私の番号とか知らなくて、最初の話の刺された刑事さんの携帯からなの」
…。
「大丈夫よ?教えたって言っても相手は刑事さんなんだもん」
「そんなの…一概には言えないだろ?第一、最初の印象は最悪な訳なんだし。刑事だっていっても、知り合ったばっかりの男じゃないか。本性なんて日向に解りっこない。そんな、変な男だと思ったくらいだ。刑事だからってな、職業を取っ払ったら、ただの男だ。どんな奴か解らないじゃないか」
「…お兄ちゃん?」
「そいつの事が心配なんだろ?」
「それは、心配は心配よ?当たり前でしょ?だって怪我したって聞いたんだよ?知らない人じゃないんだから」
「怪我の具合はどうなんだ」
首を振った。
「詳しくは解らない。だけど大丈夫だって。元気だって」
「…それって、本人からの連絡か」
「あ、うん。ちょっと前に…」
「そいつと…つき合ってるのか」
「ぇえっ?…ちょっと、何言ってるの?そんなの違う。知り合ったばっかりの人だよ?そんな事になる訳無いよ。つき合うとか、そんなんじゃないから。全然違うよ?元はおかしい人だと思ってた人だよ?違うから」
「そうなのか」
「うん、そうだよ?」
俺の知らないところで、知らない日向…。細かい事を気にしたら、そんなのは今までだって沢山あるだろう。だけど、多分、男が絡んでいるからだ。知らなかった事にこんなに苛々するのは。