貴方が手をつないでくれるなら
「お兄ちゃんは?」
…。
「…お兄ちゃん?」
「ん、ああ」
「遥さんと何があったの?」
「言っただろ?俺は、はっきり言っただけだ。あいつの思いには応えられないってな」
…私ははっきり聞いてないけど?
「それだけ?」
かな…。
「ん?…俺を連れ出して、どこかに行こうとしてたみたいだったよ。だから今夜に限って、送ってなんて言ったんだ。どこにも行かなかったぞ?」
「それは解るよ。だって帰って来るの凄く早かったから」
「もう、本当に遥は来ないと思うから。もし遥が妙な事言って来ても相手にするなよ?いいな?」
「え?うん。妙なって?」
でも、また来るんじゃないのかな。何て言うか、簡単には諦めない気がするし。
「それは、遥は、日向にきつく物を言うだろ?だから、その事だ。何を言われても、変な事言ってるくらいに思っておけって事だ。気にしなくていいから。遥の言葉とか態度に無駄に傷つく必要はないんだから」
「それは、…私がお兄ちゃんと一緒に居るから、ヤキモチみたいなモノって事?」
「ああそうだ。日向、もう寝よう」
肩に回すようにしていた腕が背中に当てられ寝かされた。布団を掛け抱き直された。
「あ。うん…」
何だか、話を一方的に終わらされた気がした。
それからは二人共、起きていても話をする事はしなかった。見てはないけど瞼は閉じていても寝ていないって解った。
それでも、お互いの温もりから次第に眠りにつき、目が覚めた時はいつもより遅かった。
珍しく、お兄ちゃんもまだ布団の中に居た。
「ねえ、お兄ちゃん、お兄ちゃん。お、兄、ちゃん起きて。フフ、大変だよ」
「ん…ん…わっ、日向、…おわ、何時だ!」
「フフ、すっかり二人共、寝坊しちゃったね。もう起きる時間とうに過ぎてるよ。ほら」
一緒に壁の時計を見た。
「…はぁ…本当だ。…参ったな。日向…」
慌てて起き上がったものの、ゆっくり頭に手を置かれた。
「今から慌てて開けてもだし、今日は午後から開けない?」
「はぁ…。ああ、そうだな。…ん゙ー、どうやら眠ったのが遅かったみたいだな…」
「多分、私も」
「はぁ、どうせならもう少し寝るか?」
「うん、あ、目覚まし、かけておかないとね」
「そうだな。日向」
「何?」
「昼前に準備して、ランチでも食べに行こうか。店には貼り紙してさ。『本日は午後からOPENします』てね」
「うん。二度目の寝坊は無しって事ね」
「そうなったら今日はもう臨時休業だな」
「絶対起きなきゃ。行きたいお店があるの」
「店よりランチ重視か?あー、じゃあ、俺はまた寝坊しようかなぁ」
「もう、お兄ちゃん。絶対起こしてあげる。起きなきゃ一人でだって行くから。二人分食べて帰って来る」
「ハハ、まあ寝なくてもいいさ。こうして時間までダラけてたらいいさ。…たまにはいいだろ」
「うん」
布団を引き上げ掛けながら横になった。
また抱き直された。