貴方が手をつないでくれるなら
また映画に行きましょう、なんて言ったら、単純でつまらないかな。どうせ誘うなら別のモノがいいかな…。
【今日は有難うございました。そしてごめんなさい。兄が迎えに来る事を言ってなくて、随分過保護に甘やかされてると思われた事でしょうね。映画、またリベンジさせて貰えませんか?勿論、直ぐにではなくていいです。お仕事の進行具合によってはそんな気持ちになれない事もあるでしょうし。これは大前提になる事ですが、また私と一緒に出掛ける事が嫌でなければです】
ふぅ、あちぃ…水あったかな…。
風呂から出た俺は冷蔵庫を覗いて水を探していた。ある。…そうだ、町田が買って入れてくれてたのがまだあったんだ。…本当、あいつは…。忠実だな。女だったら良かったのかも知れないな…。ん゙ん゙。
ふぅ…。腰にタオルを巻いたままベッドに座った。
携帯を見た。お、まずい。着信がある。呼び出しだったのか?違う。メールだし。だけど慌てて見た。
…眞壁さんだ。水を飲んだ。咽が鳴った。…ふぅ。
これは、誘ってくれていると言う事でいいんだよな。勿論こっちはいいに決まってるし、映画でいいと言ってくれるなら、俺にとっては有り難い。
…。
【甘やかされてるとは思いませんよ。心配されての事でしょう。映画、やはり、間違いなく大丈夫な確率は夜になります。それで構わないなら呼び出してください】
お兄さんの許可が下りるならな。
【有難うございます。次は映画の後にお茶でも出来たらしたいですね。映画館では今日の仕返しに、ずっと寝てくれても構いませんよ?】
…。
んー、これはちょっと大胆過ぎるかな。
【肩を借りられるなら、ずっと寝てますよ】
…あ、…。どうしよう、どうしよう。…こんな、なんて返したらいいんだろ。…えー。どうしてこんな言い方…急に。
【驚かないように、寝ますって言ってから、寄り掛かってください】
は、あ、…そうか。 これは…、ちょっと意地が悪いかな…。どうだろうか。
【それは出来ないな】
そうよね、狙ってもたれるなんて、…それは下心になっちゃうからかな。
【では起きていてください】
これは…なんとも。これでどうだ?
【では、貴女が寄り掛かればいい】
え?…何だか、柏木さん、…別人?町田さんじゃないのよね?もう一緒には暮らしてないのよね?…。随分、押して来る感じがする。…何故こんな。
【寝たふりでですか?】
【どちらでもいい。解りませんから。俺は起こしませんよ】
貴女からなら自分で意識してだから大丈夫でしょ?
【ずっと起こさないのですか?】
…どうして?
【…触れたいけど、触れられないから】
…あ。それは…、やっぱり、悲鳴をあげた事を気にしているんだ。