【短編】ファースト・キスはあなたの部屋で
「…本当バカ。可愛くないとか一言も言ってねーし」
気づいたら、目の前には顔を赤く染めた翔真が目をそらしてそう言っていた。
「……し、翔真…?」
「もっかい…したいんだけど」
「えっ」
「…だめ?遥」
2回目に確認するなんてずるい。
「…いいよ」
私がそううつむきながら返事をすると。
翔真は私の顎を軽く持ち上げてから、もう一度キスをした。
顎を支える指も唇も、私の肩を掴む左手も。
翔真の全部が熱くて。
恥かしいのに、それより気持ちいい。
「…遥」
翔真が唇を離してトロンとした目で私の名前を呼んでこちらを見つめる。
「好き」
そして翔真はそう吐くと、もう一度私にキスをした。
初めてのキスは。
すごく熱くて。
すごく恥ずかしくて。
すごく。
気持ちが良かった。
end
