名前で呼べよ。〜幼なじみに恋をして〜【番外編】
そうっと閉じると、椅子の上で適当な漫画を読んでいたそうちゃんが振り向く。


「あ、読み終わった?」

「読み終わった」


何とか絞り出したわたしの相槌は、ひどくかすれていた。


ゆらり、のそりと体を起こす。


そうちゃんは約束通りベッドを貸してくれたので、寝転がって読んでいたからだろう。腰が重い。


ううう、そうちゃんの言った通りだった。


すごいよかった。


わたしが一番好きな器用な立ち位置のキャラが、とにかくもうすごくいい味を出していた。


「はああ………」


この満足感と幸福感と妙に残る切なさはなんだ。言いようのない感動はなんなんだ。


あれはずるい。ほんとずるい。


よかった。よかったなあ……。


熱にうなされたみたいな、重いため息を吐く。


もうほんと、ほんと、ああ駄目だ。


「そうちゃん」

「ん」

「好き」

「……はっ?」


思わず真面目なトーンで断言すると、そうちゃんの声が裏返った。
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