名前で呼べよ。〜幼なじみに恋をして〜【番外編】
そうちゃんが当然のように廊下で待ってくれるから、まだ戻れるんじゃないかって、また話せるんじゃないかって、わたしばっかり、そうちゃんを目で追っている。


視界の端に女の子を見て、目が合って。

慌てて視線を逸らす。


息を潜めて駆け足で隣に並んだ。


「ごめん、」


お待たせ、と言おうとして、急いで口を閉じる。


待たせたのは本当だけど、お待たせ、なんてどうして言えるだろう。


そうちゃんが待ってくれたのは、惰性と習慣と、優しさからだ。


ああもう、ほんと。


……駄目だなあ。駄目だなあ、わたし。


ときおり勘違いしそうになる。甘い視野狭窄をその度に戒める。


戒めて、隣に並んで、切なくなる。


その繰り返し。


……駄目だなあ。


「……別に」


ほんの少し微笑んだそうちゃんが、いつものように左側に並んだ。


そうちゃんの「別に」は、必ず決まって「別にいいよ」の別に、だ。


……そうちゃんが、そうやって小さく笑うのを。


わたしは、真っ直ぐ前を向いた、そうちゃんの横顔ばかりを何度も見ている。
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