一之瀬さんちの家政婦君


「嘘だよ。冗談。そんなウジ虫見るような目で見ないでよ……。飛鳥ちゃ――…飛鳥君にそんな風に接しられたら立ち直れないからさ」


櫂人が苦笑する。

“君”付けに言い直したのは、彼なりの罪滅ぼしなのだろうか。

秘密がバレてしまったのは不本意だが、その相手が喜島 櫂人で良かったのかもしれないとも思う。

彼の中からは悪意が感じられないから。

今まで出会ってきた人間たちとは根本が違う。

穏やかで柔らかい。


「ウジ虫とまでは思っていません。気持ちが羽より軽そうな人くらいには思いますけど」


「あぁ、良かった。まだ人として見てもらえてて」


櫂人は言葉を紡ぎながら飛鳥が両手に持っている荷物の一つをサッと手にした。


「せっかく会ったんだから送ってく」


「い、いいです。荷物持ってもらうなんて悪いし、すぐそこなんで!」


飛鳥は首を横に繰り返し振って遠慮した。

“すぐそこ”なんて嘘っぱち。

マンションからスーパーまでけっこうな距離だが、そう言えば引き下がると思ったのだ。

しかし、飛鳥の読みは甘かった。

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