一之瀬さんちの家政婦君
「いっぱい買うものあったし、荷物も重かったから……」
「なるほど。それでスーパーの敷地からなかなか出られず、途中で潮風にでも当たって一休みしていたって事か」
和真は軽く頷いてみせると、飛鳥が辿ってきた買い物ルートを少しも間違えずに言い当てた。
飛鳥はそれを聞いて分かりやすく驚いた顔をすると「な、何でそんなことが一之瀬さんに分かるの?」と尋ねてみた。
「見ていたんじゃないか」
その答えはいたってシンプルなものだった。
“見ていた”と言われ、飛鳥の目線はリビングを一周する。
ソファーテーブルに置かれた一台のスマホ。和真の私物だ。
「GPSですか……」
「一度で当てるとはさすが名門生。見事」
パチパチと気持ちの入っていない拍手を数回打った和真に対して、飛鳥は少し腹を立てた。
「前にも言いましたけど、お金の目途が着くまでアタシはあなたから逃げたりしない」
伝わっていなかったのだと思うと、寂しさのようなものが心の奥から湧きだしてくる。