一之瀬さんちの家政婦君

マンションに戻ってきた飛鳥はコッソリ室内に入った。

別に悪い事をしていたわけではないのだからコソコソする必要は無いのだけど、和真からの着信を思うとなんとなく抜き足差し足になってしまう。


「……」


“ただいま”と声も掛けずリビングに通じる扉を開けて、カウンターキッチンの内側へ移動する。

彼は飛鳥が買い物に出かけた時とほぼ同じ状態のまま仕事を続けている。

ほんの少しも動いていないように見える。


もしかして、帰ってきた事にさえ気づいていないのではない……?


それほど仕事に集中していればあり得ない話ではない。

このまましれっと時間が過ぎてしまえばいいのに。

そんなことを思いながら飛鳥は買い物袋の品物を整理していく。


「たかが買い物にずいぶん時間を要したな」


この一言に、飛鳥の背筋はピンとする。


やっぱり、気付いてた――…
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