一之瀬さんちの家政婦君
「頼むね。決まったらメールでも電話でも連絡して」
櫂人は手ごろな紙コースターに自分の連絡先を記して飛鳥に手渡す。
飛鳥はそれを受け取って「了解しました」と丁寧にポケットにしまい、珈琲店を後にした。
「友だちかぁ……」
珈琲店を出て、櫂人から受け取って連絡先を眺めながら歩く。
友だちの誘いならできれば受けたい。
何より、あの趣味の良い珈琲店を作り上げたマスターをこの目で見てみたい。
おめでとうと言って、今度はマスターのコーヒーを飲みに行くと伝えたい。
一之瀬さんが許してくれればいいな……
飛鳥はそう願うばかり。
「一之瀬さんが好きそうなお菓子でも買って帰ろうかな……なんてね」
我ながらせこい考えだと苦笑い。
大体、茶菓子一つで釣られるような甘い人じゃない。
分かっているが、飛鳥はこの辺りで美味しいと有名なお菓子屋さんへ寄っていくことに決めた。