一之瀬さんちの家政婦君

夕方六時過ぎ、喜島珈琲店の前まで来ると、いつもとは違う賑やかな声が外まで聞こえてきた。

入口の扉には“本日貸し切り”の札が掛かっている。

窓から店内を覗くと全く見覚えの無い人がいたり、少し見覚えがあったりする人たちが和やかに会話を楽しんでいるのが窺える。

常連とはとても言えない飛鳥だが、普通に入ってもいいのだろうかと躊躇われた。

カウンターでお客様相手をしている櫂人を発見すると、彼も飛鳥の存在にすぐに気付き入口の方へと歩いて来る。

そして、カランコロンと優しい音を奏でながら扉が開く。

「飛鳥ちゃん、いらっしゃい。来たなら中に入ったら良かったのに」

櫂人は笑って飛鳥を招き入れた。

他の常連客は遠慮なく入ってくるから、入室に躊躇する飛鳥のことが可笑しかったのだ。
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