一之瀬さんちの家政婦君
「なんだか入り辛くて……」
「あ、“本日貸し切り”だから?飛鳥ちゃんは別でしょ。招待客なんだから」
櫂人はさらに盛大に笑う。
すでに一杯済ませているみたいだ。
「外は寒かったでしょ。コート預かるよ」
「ありがとうございます」
飛鳥は着ていたコートを脱いで櫂人に預ける。
少し遅れてやってきた飛鳥はすでに注目の的だ。
互いに顔見知りが多い常連客同士とは違い、飛鳥の存在を知っている人間は皆無なのだから尚更。
「櫂君、その子は誰だい?櫂君の彼女とか?」
どこか気品の漂う年配の女性が声を掛けてきた。
ブラウン色の花柄ワンピースと首に巻いたストールが印象的。
櫂人の彼女かと問われて飛鳥はドキッとしてしまう。
女の子としてドキドキしてしまうではなく、女子とバレてしまったのではないかという意味で。