一之瀬さんちの家政婦君

「オレンジジュース、OK」

櫂人は冷蔵庫からオレンジジュースを取り出し、グラスに注いで飛鳥に手渡した。

飛鳥が座る席のそばで車いすに座って皆の楽しそうな雑談に目を細めている気品の漂う老紳士がいる。

時折、皆から“マスター”と呼ばれているところを見ると、彼が今夜の主役であることは間違いない。

飛鳥は花束を持って席を立ち、マスターの車いすの前に屈んで「こんばんは」と声を掛けた。

マスターはニコリと微笑んで「こんばんは」と返してくれた。

「この度は退院おめでとうございます」

飛鳥が花束を手渡すと、マスターはふわっとそれを受け取り「ありがとう」と礼を告げる。

想像通りの優しい人。

その人柄がそのままお店に反映されているのを感じた。
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