一之瀬さんちの家政婦君
夜も深まってくると、冬の冷たい風がさらに身に染みてくる。
「うわっ……寒いな。バイクだったらサッと送れるんだけど、いま修理中でさ」
「歩くの好きなので全然大丈夫です」
飛鳥と櫂人は広い歩道を横二列に並んでゆっくり歩いていく。
車が行き交うたび、その明かりが二人を照らしていた。
「マスター、とても優しい人ですね」
「そう見えるだろ?あぁ見えて、めちゃめちゃ厳しい人だからな」
「そうは思わなかったけど……」
「ガキの頃から何回怒られたことか。宿題忘れとか喧嘩とか、両手の指だと数えきれないぐらいあるな」
「それは、喜島さんが悪いんじゃ……」
「いや、まぁそうなんだけど」
飛鳥のツッコミに櫂人は苦笑するが、続けて「でも、愛情はあったんだよな」としみじみ口にした。