一之瀬さんちの家政婦君
「変な事聞いてごめんな……」
「いいえ。母が亡くなったのはずいぶん昔のことなので」
恐縮している櫂人とは裏腹に飛鳥はアッサリしていた。
母親の死について、飛鳥なりに長い年月をかけて消化していたのだ。
とは言え、櫂人からすれば完全に地雷を踏んでしまった感が否めない。
それと同時に、男として彼女の事がますます放っておけなくなってしまう。
「なぁ、飛鳥ちゃん。俺――…」
櫂人は自分の想いを飛鳥に伝えようと口火を切る。
しかし、今言ってしまえばただ同情しているだけじゃないかと思われる気もしたから躊躇っていた。
「……何ですか?」
飛鳥は返事をして彼の言葉を待つ。
待っているのは分かっていたが、櫂人は言葉の続きを口にすることができない。
二人の間に沈黙が生まれたその時、通りの先から「飛鳥」と男性の声が聞えた。