一之瀬さんちの家政婦君

こんなの“女だとバレました”と言っているのと同じじゃないか……


飛鳥は枕に顔を埋めて「あぁーーっ!」と思いっきり叫ぶ。

学生証を見せてもバレる、見せなくてもバレる。挙句の果てにキレて敵前逃亡。


一体どうするのが正解なのか……


そのままの体勢でしばし思案する。

「そうだ!」

飛鳥は勢いよく枕から顔を上げた。

喜島さんは良い人だ。

信頼のおける人だと思う。

だから、心配はいらない。

そう和真に説明すればいいのではないかと閃いたのだ。

飛鳥はベッドから跳ね起きて、扉の前まで走っていく。

ドアノブを掴んで再び扉を開けようとしたが、寸でのところで躊躇う。

今さら何を言ったところで契約違反は事実。

きっとそれだけはどうすることもできない。

飛鳥はドアノブから手を離してベッドに戻り、そのまま眠りについた。
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