銀丸日
「百貨店」とは、近代小売業すべてを指す言葉
そもそも「百貨店」とはどういう業態なのでしょうか。百貨店を知らない人はいないと思いますが、「百貨店って何?」と改めて聞かれ、自信を持って答えられる人は少ないと思います。

2015年7月時点、経産省では「大きな店舗で多様な品揃えをして主に対面(接客)で売る(*1)」といった意味合いで定義しており、おそらく多くの人が抱くであろう「高級」「富裕層」「百貨 (多様な品揃え)」といったイメージを反映したものとなっています。

しかし、歴史を振り返ると、昭和31年に施行された百貨店法では「同一の店舗で床面積の合計が1,500平方メートル以上の物品販売業」、つまり大きいお店=百貨店といったとても大雑把な言葉で定義されており、現在の高級なイメージは一切語られていません。実際、上野広小路の松坂屋は、改築時に百貨店の祖・日比翁助氏にアドバイスを求め「大衆向け百貨店」を目指していますし、大丸は戦前「どこよりも良い品をどこよりも安く」を標語としており、現在とは大きく異なる認識だったことが伺えます。

このことから私は、「"百貨店" という言葉そのものは組織的に小売・流通事業を行う、いわゆる近代小売業全てを表しており、時代の流れにより、結果的に "大きな館を構えて買い回り品を中心に丁寧な接客で売る" といった姿になった企業」と捉えています。
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