銀丸日
百貨店は、存在意義を求めて常に変化することを宿命付けられている
百貨店のように、定義自体が明確な "儲けるための戦略" を持たないビジネスというのは、時代の変化に合わせて、常に新しい存在意義を提示しなければならないという宿命を持っています。百貨店の歴代の経営者や従業員は、この宿命に負けることなく、むしろそれを武器とするかのように時代に合わせた変化を続け、現在に至るまでの栄光の歴史を紡いできました。

この歴史を受け継いだ百貨店各社の経営陣は今、ショッピングセンターや製造小売の成熟とインターネットを用いた新興勢力各社が台頭する環境にさらされ、新しい百貨店像を描くことに頭を抱えています。

実は、欧米の百貨店が仕入れから販売まで幅広い役割を担当するのに対し、日本の百貨店は、建物や陳列、催し物、接客など、お客様に見える部分を整えることを主な業務として、仕入れや物流など、お客様に見えない部分の多くを外部業者に委託するような仕組みをとっています。

たとえば、商品の仕入れを行うとき、欧米の百貨店は多くの人員を割いて非常に厳しい目で一品一品細かくチェックした上で"買い取る"のに対し、日本の百貨店はより少ない人員で臨み、売れ残った商品はメーカーに引き取ってもらうような契約が主流です。

これは戦後、急成長した市場に対応するために貴重な自社経営資源を前線に集中させるべく辿り着いた事業モデルで、決して怠慢でも戦略ミスでもないのですが、結果として欧米百貨店と比べると日本の百貨店は、強みを持てる領域が狭くなっています。

強みを持てる領域が狭いということは、すなわち他社との違いを作り出しづらいということであり、一例をあげるならば、百貨店とショッピングセンターの違いはほとんどなくなっているという具合です。
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