ミステリアスなユージーン
静かに周りに視線を送ると皆が皆、とても神妙な顔をして佐渡君を見ていた。

「俺は御社の社長にはっきり申し上げました。SD課がブランディングプロデュースするに値するか確かめたいと。ブランディングによって価値を高め、信用されるに値する課であるかを肌で感じたいと」

「……だから……身分を隠してうちに来たんですか」

安藤くんがそう言うと、佐渡君はしっかりと頷いた。

「はい。それも本日までです。今までありがとうございました」

ペコリと頭を下げた佐渡君に、女子達が焦ったように声をかけた。

「は、半年間って話なんじゃ……?」

「急すぎませんか?!」

佐渡君が少し寂しそうに笑った。

「……申し訳ないです。あまり短い期間だと不自然かと思いまして」

……信じられない。こんなの……。

それを見た課長が、重苦しい雰囲気を一掃するかのように爽やかに笑った。

「で、結果はどうでしたか?SAグループ日本支社長?」

もうこれ以上聞いていられなかった。

「課長、私、施工主との打ち合わせに行ってきます。何軒か回りますから定時過ぎたら電話します」

気付くと私はこう口走り、身を翻していた。

腹が立ったわけじゃない。悲しいわけでもない。

でも、このままオフィスにはいたくなかった。

なんだろう、この気持ち。

何だか苦しい。そう……胸が苦しいのだ。

じゃあ、どうして苦しいの?……わからない。
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