ミステリアスなユージーン
痺れるような感覚に、目眩を覚えた。

私の頬に広がる、優しくて甘い佐渡君のキスに。

分からないけど佐渡君の事だ。

どうしてキスをするのか聞いても絶対にムダだと思う。

それなのに、

「あなたの人格を否定するつもりなんかありません」

「……え?」

佐渡君が両腕に力を込めて私を抱き寄せた。

たちまち心臓が煩く騒ぎ出し、私は少しだけ顔を起こすと佐渡君を見上げた。

「……」

唇を離し、私を見下ろす佐渡君の瞳がエレベーターホールのライトを反射していて綺麗だった。

でも……。

「どうして眼をそらすんですか」

「だってまた『見惚れてもムダですよ』って言うんでしょ」

「……」

佐渡君が僅かに両目を細めて私を見下ろしている。

……分からない。この眼差しと沈黙の意味が分からない。

私は彼の心を見極めたくてその貴石のような瞳を見つめた。

その途端、彼の部屋で抱き合い、一夜を共にした記憶がまたしても蘇る。

せり上がるような快楽の波に漂った私と佐渡君の熱い夜。

うわ、マジでヤバい。

その時、佐渡君がニヤリと笑った。
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