ミステリアスなユージーン
「徹夜だと聞いたから疲れてるかと思いましたが……こんなに煩いなら大丈夫ですね。俺、帰ります」

淡々とこう言うと佐渡君は腕を解き、私から離れようとした。

……ちょっと待って。

えっと、あの……!

心がザワザワと焦っている。こんなのは嫌で、ほんとは、本当は……。

わかってるんだ、本当は……。

彼が私を気にかけてくれてこんな夜中に来てくれたのを、本当は心の隅で想像がついていた。

なのに私ったら……ほんと可愛くないしヤな奴だ。

でも何て言ったらいいか分からない。

分かっているのは、このまま佐渡君と別れるのは嫌だという気持ち。

「じゃあ、また朝に」

ああ、もうーっ!!

踵を返してエレベーターのボタンを押した彼の背中に、私は意を決してしがみついた。

「だ、大丈夫じゃない!お腹すいた!ひ、ひとりで食べに行くのは嫌」

な、なによ、子供か私はっ!

ダメだ、死ぬほど恥ずかしい。

やっぱ断られるに決まってるし、迷惑でしかないよね。

「ご、ごめん!空腹すぎて取り乱しちゃったみたい。大丈夫、私は大丈夫。じゃ、じゃあおやすみなさい」

急いで離れようとした私の腕を、佐渡君が振り向きながら素早く掴んだ。

「あ」

「え」

多分だけど数秒間……私たちはお互いに驚いて見つめあった。
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