ミステリアスなユージーン
でもその後、佐渡君は私から顔を背けて小さく息をつき、私はどういう訳か鳴り止まない胸の鼓動に戸惑っていた。

「……」

「……」

どうしよう……。

その時、佐渡君が私とは逆の方向を向いたまま、ボソッと言った。

「あなたは……可愛いのか可愛いくないのかさっぱり分からない」

私から顔を背けるようにしてそう言った彼の表情は見えなかった。

でも、私の腕を掴む佐渡君の手はそのままで……。

その手が温かくて、身体全体が彼の温度に変わっていくような感じがする。

「……可愛いって言われたい。だから、頑張るよ」

その直後、フワリと空気が動いた。

視線をあげると、佐渡君が真ん丸な眼をして私を見ていた。

額にかかる前髪が僅かに乱れていて、それが少しだけ彼に隙を作っているように見える。

いつもよりも親しみやすい佐渡君のその顔が可愛かった。

「少し仕事が落ち着いたら女子力上げるよ。男の人に可愛いって言われるように」

「……」

佐渡君は相変わらず驚いたように私を見ていたけど、ようやく小さく息をついて両目を閉じた。

「……あなたは本当に……分からない人だ」

佐渡君だって……私の腕を離さないままだし少しだけいつもと違ってるよ。

でも私はそれを口に出さず、彼を見て少し笑った。
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