ミステリアスなユージーン
本当にバカバカしい。私も、課長も。

だって課長は新田麗亜さんと婚約中なのだ。

そして私は佐渡君と恋人でもなんでもない。

なのに、課長は私を求めようとして私はそれを拒む為の嘘をついて。

そして課長はそれを見透かしていて、我慢しないと言う。

疲れが、一気に私を引きずり倒そうとしがみついてくるような気がした。

ダメ。

もうしんどいんだけど。

その時、

「菜月!」

背後から聞こえた声に、私の身体がビクッと震えた。

「菜月、電話して来いって言っただろ」

振り返る前に腕を引かれて、私と課長の間に距離が生まれた。

課長の息を飲んだ顔と、私の跳ね上がる鼓動。

佐渡君だ、見なくてもわかる。

何も出来ない私の身体の向きを変えると、佐渡くんはクスリと笑った。

「何だよその顔。課長すみません。菜月がご迷惑かけませんでしたか?菜月は徹夜だったものですから」

「いや……」

突然現れた佐渡君の自然すぎる振る舞いと言葉に、課長は眼を見張ったままだ。
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