ミステリアスなユージーン
「では失礼します。菜月。帰ろう」

「うん……」

ようやく返事をすることが出来た私の手を、佐渡君がギュッと握った。

「今日は泊まれよ」

「うん」

ニコッと課長に向けて爽やかに微笑み、その場から私の手を引いて歩き出した佐渡君。

白いVネックの半袖シャツと、濃い目のジーンズという姿の佐渡君はとても新鮮だった。

でも、なによりもその大きな背中が凄く頼もしく思えて、私は胸がキュッとした。

「佐渡……」

「何してるんです?行きますよ」

「……うん」

佐渡君はチラリと振り返ってこちらに視線を送ると、私の手を優しく握り直した。

∴☆∴☆∴☆∴

「過去のデータを見ると、飯星工務店との接待に使う店はあの店を含めて三軒だけでしたから、大した手間もかかりませんでしたよ」

駅からそう遠くない佐渡君のマンションにお邪魔した私は、平然とそう言った彼を見上げた。

「……心配して見に来てくれたの?」

オズオズと私がそう言うと、佐渡君は思い出したかのように不愉快そうな顔をした。

「案の定あなたは課長に誘われていたじゃないですか。しかもあんなに密接して……」
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