ミステリアスなユージーン
いつもは少し冷たげに見える顔が、今は何だか幼くて可愛い。

それに……どうしてこんな風に私を抱き寄せるのか分からないけど、ドキドキする。

それから、嬉しい。

……もっとくっ付きたいと思った。

佐渡君に、もっと。

「……」

「……」

思案しながら佐渡くんの瞳を見つめていると、彼は諦めたように笑った。

それから私の後頭部に手を回すと、トンと額を自分の胸に押し付ける。

「そんな顔で見ないでください」

「……」

何も言わずに私が佐渡君の背中に両腕を回すと、彼は僅かに息を飲んだ。

ああ、また冷たくあしらわれるだろうか。

『俺をオトそうとか考えないで下さいよ』って。

だったら、内緒にしておこう。

この気持ちを。

この、芽生えてしまった恋心を。

その時私の耳元で、佐渡君が優しく囁くように言った。

「シャワー浴びますか?ベッドはご存知のとおり、ひとつしかないですが」

「……うん」
< 81 / 165 >

この作品をシェア

pagetop