ミステリアスなユージーン
「……さ、沙織……、私、今抱えてる仕事が一段落したら、もっとちゃんとした女になるわ。それからもうユージーンとは寝ない。実はね、好きなのに寝ちゃって後悔したんだ、凄く」

呆れ顔だった沙織が、更に呆気にとられている。

「はー?寝てもいいじゃん、好きなんだし。それにあんたちゃんとしてるじゃん。仕事は一生懸命だし家事もやってるし。なにがダメなわけ?」

「だ、だから……」

私の言葉を遮って沙織は続けた。

「私には及ばないけど、菜月は綺麗だし可愛いよ?女子力になんの問題もないし」

それから沙織は私を見つめてニッコリと笑った。

「性格もいいしね。あんたが頑張らなきゃいけないのはさ、別のところだよ」

「別のところ?」

「そ。あ、これ以上の助言は期待しないで。面白くなくなるから。まあ、仕事が一段落ついたら家飲みしよ!じゃあ私行くわ。今日、直ちゃん体調よくないんだよね。少し早めに休ませてあげなきゃ」

「あ、うん。頑張ってね」

直ちゃんとは沙織の後輩で、同じ受付係の女の子だ。

私は小さく手を振ってからトレーを持ち上げた沙織に笑って頷いた。
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