ミステリアスなユージーン
シラーッと頭上を見上げて腕を組んだ佐渡君はモデルのように綺麗だけど、どこか不機嫌そうにしていて私を見ようとはしなかった。

エレベーターに乗り込んでからもそれは続く。

……。

「あのさ」

「なんです?」

「 東大寺の金剛力士像ってさ、実は人間に出来そうで出来ないポーズで立ってるって知ってた?人に見えて人にあらずっていう感じを醸し出すためっていうか、神格的な」

「この雰囲気でよくもまあそんな豆知識を飄々と言えますね」

「すみません……」

せっかくニコニコして言ってみたのに、叩き落とされた気分だわ。

……気まず……。

私は氷よりも冷たい佐渡君の視線に完全に挫けながら呉服桜寿へと向かった。


∴☆∴☆∴☆∴

「待ってたわよ」

「大女将、こんにちは」

「大女将。お時間頂いてありがとうございます。本日はわが社の案をお持ちしました」

立派な個室に通された私と佐渡君は、出された高級抹茶を一口戴いた後、持ってきた資料を広げながらこう切り出した。

大女将が見易いように、家具のみの写真と、室内全体のパースを大きめにプリントアウトしたものだ。

ああ、いつでもこの瞬間はドキドキする。

大女将は気に入ってくれるだろうか。
< 88 / 165 >

この作品をシェア

pagetop