ミステリアスなユージーン
私と佐渡君が静かに見守る中、大女将が静かに口を開いた。

「ガラス?」

「はい。強化ガラスです。一番奥の区切られたスペースはすべて桐箪笥ですが、入り口付近の浴衣スペースは、反物ケースを強化ガラスにしようと思っています。安っぽくならないように家紋を彫り込んだ銅か真鍮のプレートを縁にあしらい、金、銀、銅、もしくは朱色等で色を流し込もうと思っています」

「それは素晴らしいわね。それから明るくてとても解放感があって美しいわ。なんて素敵なの。浴衣のスペースと小物類のケースも同じようにしてほしいわ」

「かしこましました。小物類のショーケースに関しましては鏡を全面に貼る予定です。それと、日焼けを防ぐために内装の施工に取りかかる前に全ての窓ガラスににUVカット溶液処理を施します」

「とても楽しみだわ。菜月さん、佐渡さん。期待していますよ」

「はい!」

私は差し出された大女将の細い手をそっと握ると、彼女の眼を見てしっかりと頷いた。


∴☆∴☆∴☆∴


株式会社デザインタフにプレート加工の依頼をし、デザインの確認が終わった時には既に午後九時をすぎていた。

「……大丈夫ですか?強化ガラスの着物タンスなんて……」

「確かに心配はあるよね。でもコストは抑えられる。全てのプレートが出来上がるには七日かかるけど、出来たものから取りに行って工房に運ぶ。で、工房に泊まり込みでプレート取り付けをやる」

「……安藤くんとですか?」

「そ。雅野工房はね、私の大学時代の先輩の会社なんだよね。だから気心は知れてるし腕は確かだし、安藤くんとも面識あるしね」
< 89 / 165 >

この作品をシェア

pagetop