ミステリアスなユージーン
「熱なんかありません。あれは……嘘です。あなたをここへ連れてくる為の」

急に立っている床が抜けて、落ちていくような感覚に包まれた。

……なんで?

「……嘘?」

佐渡君が私の髪に頬を埋めた。

「嘘ですよ。俺の平熱は37度です」

早鐘のように鼓動が激しくなる。

「どうして……どうしてそんな嘘をつくの?」

佐渡君はいとも簡単に即答した。

「あなたを抱きたいから」

ああ、やっぱり私は取り返しのつかない過ちを犯してしまったのだ。

佐渡君は、課長と寝ていた私を都合のイイ女として使おうとしている。

つまり、誰とでも簡単に寝る女だと思い、『発散するためだけの相手』として扱っているのだ。

心臓に、ギュッと握られたような痛みが走った。

「……本気で言ってるの?」

残酷なほど佐渡君が即答した。

「本気です。あなたを抱きたい」

胸にナイフが降り下ろされる。

佐渡君というナイフが。

これは罰だとすぐに分かった。

課長と身体だけの関係を続け、それで一時の寂しさを紛らわしてきた私の罰なのだ。
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