キミは甘のじゃく

「へえっ!!相手はモデル?女優?」

「それとも金持ちの令嬢か?」

……残念ながらモデルでもなければ、女優でもありません。

金持ちの令嬢なんてもってのほかだ。お父さんが経営しているのは、従業員が両手で収まる小さな工場である。

(お願いだから変こと言わないでよ……?)

心の中でひたすら願い続け古賀くんをチラ見すると、彼もこちらをジイッと見ているではないか。

「別に……何から何まで普通の女だよ」

……何から何まで普通の女で悪かったわね!!

(なによ……古賀くんなんか……古賀くんなんか……)

私はヤケクソ気味にグビッとお酒を飲み干し、グラスを空にした。

「さくら?急にどうしたの?」

一緒のテーブルで談笑していた友人は、急に私がピッチを上げたので唖然としていた。

「ううん、何でもないよ」

どうやら、古賀くん達の話に気を取られ過ぎてしまったようだ。

ウェイターの人にお酒のおかわりを頼むと、今度は友人の話に集中する。

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