キミは甘のじゃく
「わかった!!さくらったら市村くんのこと探してるんでしょ?」
……衝撃が大きすぎて、頭に特大級のたらいでも落ちてきたのかと思った。
私は届けてもらったばかりのお酒を思わずダンっとテーブルに叩きつけた。
「何でそこで市村くんがでてくるのよ!?」
「残念だったね、さくら。市村くん、今日は仕事で来られないんだって。知ってた?彼、お医者さんになったんだって」
「ねえ、さくら!!二次会に来れないか、市村くんに電話してみようよ!!」
「さくらが言えば、きっと市村くんも来てくれるかもよ?」
みんなこちらの話を一切聞かずに勝手に盛り上がり始めている……。
(ひどいよ~~!!)
私と市村くんが何の関係もないって知ってるくせに!!
私のことをからかって楽しむなんて悪趣味だ。
「いいじゃん、さくら。電話するだけしてみたら?」
「しいちゃんまで、何を言ってるのよ……」
まだ序盤だっていうのにみんな酔っ払ってるの!?
このままだと本当に電話を掛けなきゃいけなくなる雰囲気である。
(ほとぼりが冷めるまでどこかに隠れていようか……)
そう思い、席を立とうとした矢先のことだった。