キミは甘のじゃく
「ため息なんてついちゃってどうかしたんですか~?」
こちらの気も知らず仁美ちゃんは今日も呑気に話しかけてくる。
「ちょっと疲れてるのかも……」
「最近、忙しかったですもんね~。お疲れなら今日は早く帰ってお家でゆっくりしたらどうですか?」
「あ……うん。そうしたいのはやまやまなんだけど、家にいてもなんかゆっくりできなくてね……」
忙しい方がまだ私としてはありがたい。
家に帰ったら古賀くんと顔を合わせなくちゃいけないからね。
古賀くんの豹変ぶりにまだ慣れていないせいか、話しかけられるとおっかなびくり挙動不審になってしまうのだ。
「何で家にいても落ち着かないんですか?」
「こが……」
おっといけない。うっかり古賀くんのせいと口走るところだった。
急だったせいもあって、結婚するという話は、会社の中でも上の役職の方達にしか話をしていないのだ。