キミは甘のじゃく

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「はあ……」

(本当にどうしたものか……)

私は誰にも見られないようにオフィスの片隅でこっそり頭を抱えた。

(早く何とかしなくちゃ……)

そりゃあね?

一緒に暮らす上で夫婦仲が冷めきっているっていうのも、どうかとは思うよ?

訳アリ結婚とはいえ夫として歩み寄ろう、私のことを好いてくれようという企業努力はありがたいのだが……。

ちょっとアツアツ過ぎやしませんか?

(あーあ……。どうしてこんなことになっちゃったんだろう)

結婚は古賀くんが古賀電機の後継ぎにおさまるまでの間だと、高を括っていた。

……当然、結婚生活は短く味気のないものだろうと予想してたし、それでもかまわないと思っていた。

しかし、これでは真逆だ。

(……古賀くんがあんなに“甘えた”になるなんて)

まさかあんな風になるなんて誰も思わないじゃない!?

古賀くんって恋人とか、女性の前では人が変わるタイプなの!?

それとも、知らない間に双子の片割れと入れ替わっていたとか?

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