キミは甘のじゃく
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玄関から物音が聞こえてきたのでテレビを消して廊下に出ると、帰宅した古賀くんが靴を脱ぎ始めたところだった。
「おかえり」
「……おう」
ネクタイを解きながらおかえりのキスを当たり前のようにすると、洗面所に向かいまずお風呂に入る。
預かったカバンはズシリと重い。
古賀くんが帰ってくるのは、いつも夜が更けたころ。
他の社員とともに古賀電機で働いている彼は若くして課長の地位にあり、何十人もの部下を束ねる優秀な社員なのである。
任された役割に伴いその責任も大きくなり、膨大な仕事に日々忙殺されている古賀くんにとって、余暇はほんの僅かな時間しかない。
風呂上がりに作りおきしておいた夕飯を食せば、間もなく就寝の時間が訪れる。