銃刀法がなくなった!
スコープを覗きながら、狙いの中心を静かな道路を歩いている男に定める。ビルの前を通り過ぎた直後、男に向けて一つの弾丸が一直線に発射される。心臓を貫く程の威力をもった一発が、体に当たり、男は血を垂れ流しながら静かに倒れた。廃墟と化した街並みで横たわった男は、数秒後に起き上がり係員の人に連れて行かれた。
直後、人の気配がないこの街にアナウンスが流れた。
──生存者、残るは五人。
先程男を撃ったばかりの少女、水瀬 みのるは、慣れた手つきで静かに弾を詰め替える。
長いライフル銃を抱き抱え、ビルの屋上から隣の屋上へと素早く移動する。建物内に入ると、意外にも中は明るかった。内部は棚や机が倒れていて、死角が多い。
「ちっ、先を越された。」
そう呟くと、みのるはスナイパーライフルを置き、近距離系の銃へと持ち替えた。
直後、鉄の擦れる音が部屋に響いた。刀を抜いた男を目で捉え、すぐに体勢を立て直す。小型の銃を構え、狙いを胸に決める。直後、目の前で男の体が崩れ落ちる様をみのるは静かに見届ける。
そして、残りが二人となったというアナウンスを聞くと、静かに小型の銃を納める。そして、スナイパーライフルを抱えると、窓から外を見た。
大胆にも、男は道路の真ん中を歩いていた。みのるとは違い、小さく小柄なアサルトライフルを握っていた。特に辺りを気にすることなく歩いている男にみのるは目を細める。
(あれが前回の優勝者……。)
見かけは他の参加者と変わらない風だが、きっと実力を隠しているに違いない。と気合いを入れ直す。
目をつむり、深呼吸をする。すると、さっきまで歩いていたはずの男が消えていることに気が付く。みのるは慌てて辺りを見回すが、遅かった。背後からカチャッという銃の構える音が聞こえた。距離は約十m。発射された弾は、みのるの胸元に一直線に迫ってくる。その直後、鉄と鉄のぶつかった様なキーンという音が鳴った。それは、間一髪で弾を防いだ音だった。みのるは衝撃に耐えきれず折れてしまったスナイパーライフルを見て「くそっ」と吐き捨てるように言い、先程しまったばかりの銃を腰から取り出す。男は驚いたような顔をしたが、すぐに構え直し、みのるに第二の攻撃をしようとしてくる。しかし、みのるは男の銃を蹴りあげ、すぐに男の顔面を撃ち抜いた。至近距離からの攻撃に、男も抵抗できずそのまま血を流しながら倒れた。数秒後には、頭の傷はすっかり消え、男は顔を歪めながら退場口から係員と共に出ていった。みのるは折れたスナイパーライフルをそっと抱き抱え、ビルを出た。
───今大会優勝者は……!初出場、水瀬 みのるさんです!
という、アナウンスを聞きながら、みのるは退場口とは逆の方向にある『優勝者門』と書かれた大きな門をくぐった。

歓声が大きく巻き起こる先には、トロフィーと、折れたスナイパーライフルを抱えたみのるの姿があった。
銃刀法が取り消されてからすぐに、『Happy LIFE~銃大会~』が開催された。普段は、銃や刀の使用が違法とされている日本だったが、この大会でのみ自分の銃を使用出来るという魅力があり、すぐに世界に広まった。日本には、半径十キロもの円形のリングが設立された。今回は第六回ということで、参加者も前回の倍近くとなった。その人数は約五万人。海外からの参加も多く、今では優勝賞金が百万円ということもあり、優勝を狙う者も多くいる。
そんな中、優勝したみのるはすぐに多くの報道陣に囲まれ、海外のニュースでも流れ出た。

そして、それが始まりだった。

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