金木犀の季節に



その言葉に、私はただただ一生懸命、頷くことしか出来なかった。


やっとわかった。

きっと、奏汰さんは死にたくて特攻に征くわけじゃない。
命を何より大切に思っているからこそ、大切な人たちに生きてもらうために『守りに征く』んだ。

それならば、特攻はなんて残酷で、優しいのだろう。
社会科の西山先生は、

「特攻はテロと同じだ」
「無駄死にだ」

と言っていたけれど、きっと違う。
七十年以上前に亡くなったひとりひとりがそれぞれの想いを持って、その華のような命を散らしていった。

無駄に死んだ人なんて、どこにもいない。





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