金木犀の季節に



ほんとうは、もっとたくさんのことをしたかったし、八木奏汰という人物についてもっと知りたかった。
……叶わなかったことばかり。
それでも、こんなに幸せで満たされているのはーーーー

音楽を通じて、あなたの思いが聞こえたからだ。


国のために命を捧げると決めた一人の青年の音は、
ただただ、真っ直ぐに。
平成を生きる少女へ、


「さようなら」


と、告げていた。


永遠の別れを、精一杯の愛をこめて。

世界で一番切ない挨拶に、世界で一番美しい思いを乗せて。





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