金木犀の季節に


本島から何十分たったころだろうか。

島へ、ついた。

眩しい日差しと、燃えるような緑。
時折、冷たい風が頬をかすめる。
回天記念館は、フェリーの乗り場から十分ほどのところにあった。

「これから記念館へいきます」

先生の号令にみんながダラダラと返事する。

「各自分かれて二時間後にここで集合です」
「はーい」

友達と一緒に記念館へ入った。

「ねぇ、ちゃんとみる?」

理穂に聞かれて、

「あたり前田のクラッカー」

即答した。
こんな冗談をいう声さえ、震えてしまう。
ここで、奏汰さんのような若い命が散っていったんだ……。

「じゃあいこっか」

私たちは歩き始めた。



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